OTOTOTOKI ー 青羊(けもの)

 

夕方の山手線。
座っている私の前に立ち、
話している女子高生たちがいて、

かつて自分も女子高生だったことを
不思議に思う。

 

時は私を分断しているな、
と思うことがある。

わたしは過去を、かなり忘れている。
覚えてることが、少ない。
高校生だったころの記憶などほとんどなく、
真冬に外でホルンを吹いていたこと、
土曜日の午前授業のあと
ベランダにいたこと、

窓から空ばかり
見ていたことぐらいしか、ない。

 

私は友達と会って過ごした楽しい時間さえ、
忘れてしまう。


「あれ行ったよね」

などと友達に言われ、
記憶がないことなどしょっちゅうで、
何度も気まずい思いをした。

 

だけれど、覚えていることもある。
去年の8月に雨が降りすぎたこと。
これは歌にしたから。
今年の1月22日に大雪が降ったこと。
その前後に、青く赤い月が現れたこと。
これも歌にしたから。
歌詞にしたら覚えていることが
出来るんだな、ということに
最近はっきり気づいた。

 

時と音。
結びつきやすい元素記号みたい、と思う。
あの曲を聴くと、かつての恋人を思い出す。
〜イーグルス『ホテル・カリフォルニア』〜
それは、村上春樹の小説を初めて読んだ頃。
笹塚の狭いアパートに住んでいた頃。
埃っぽい街。
歌い始める前のもうひとりの私。

 

でも、曲にしてなくっても、
忘れられない時もいくつかあって。
初めて巣巣に行った
前が見えないほどの雨風の、
グレーの夕方を私は何度も思い出す。

初めて会ったのに、
別れ話みたいな時間だった。

それから時計の針が
5000回以上ぐるぐるして、

巣巣はオレンジの甘いひかりが
こぼれる場所になった。

その甘さを、元気がなくなった時に、
思い出したり、分けてもらったりしている。

 


「けもの」Web

 


▼アンサーfromながい


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