小説のチカラ ー 髙羽千佳

 

趣味といえば、フライフィッシング。
10年近く、細々とだが続いている。

 

清流に赴き、魚が好む川辺の虫に似せた
疑似餌(フライ)をつけてキャストし、
本物の虫に見えるように舞わせて
魚と対峙する。
釣果が思わしくなくても、
清らかな空気、
コトコトという水の音、
活発な魚と戯れれば、
私はたいていご機嫌だ。

 

なぜフライフィッシングを
始めたかというと、
ある小説との出会いがきっかけだった。

 

それは、企業買収、再生の現場を
克明に描いた経済小説、
真山 仁さんの「ハゲタカ」。
そのわずか3ページほどに、
早朝の静寂な川で、女性がトラウトを
ランディングネットで引き上げるまでの
緊張感のある心理・情景描写が
書かれていた……。

 

ぐっと心を掴まれた。

 

心が乾くようなビジネスのやり取りが
展開される中、
フライフィッシングのシーンが、
ことさら瑞々しく
感じられたのかもしれない。

 

こんな風に、
小説から影響を受けることが多々ある。
ストーリーに気持ちを寄り添わせ、
自分なりに描写をあてがいながら
読み進めると、新たな知識でも
すんなりインプットできるのが嬉しい。
編集の仕事をする上でも、
小説からヒントをもらうことは多い。

 

中学生の頃、数学が猛烈に苦手だった。
おもしろいと全く思えなかったし、
先生も嫌いだった。
大人になってから、
小川洋子さんの「博士の愛した数式」を読み
ああ、この本をあの頃読んでいたら、
私の数字嫌いも、もう少しマシだったかも…
と思ったり。

 

世の中に送りだされた膨大な小説たち。
一冊の本と私は、点と点の出会いだ。
すっと別世界に導いてくれる
小説との出会いを、
いつも心待ちにしている。

 

 


▼アンサーfromながい


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