「待つこと」を教わる ー 赤木美名子

寒風にさらした大根は粕漬けに

 

東京に住んでいた頃、
異常なくらいせっかちだった。
数分間隔で来る電車が
少しでも遅れるとイラッとする。

 

スケジュールや工程を決めて、
そのとおりに終わらせることに
こだわりすぎる。
苦しかった自分。

 

地方の山間部へ移住し、
駅すらない日々の生活は電車とは無縁。
2足のわらじの1足である米づくり、
農のある暮らしをするようになったけれど、
経験のないわたしは
思い通りなんて行くはずもなく、
計画通り進めば万々歳という生活へ。

––いつの間にか、軽くなった自分。

 

農のある暮らしの中でも
発酵食や保存食づくりは
わたしが持ち合わせていなかった
「待つこと」
そして、その先の
「待つ楽しみ」まで教えてくれた。

 

雪が残る春には、家族3人で手前味噌作り、
春は雪の下で冬越ししたキャベツで
ザワークラウト作り、

初夏には新米発送に添える梅干し作り、
冬は大根の粕漬け、そして、
甘酒やヨーグルト作りは
一年を通して
食いしん坊なわたしは
「待つこと」が好きになった。

 

先日、大根を1週間ほど寒風にさらし、
夫がつくる日本酒から出る副産物の
酒粕に漬けた。


蔵人の夫曰く

酒粕に含まれる麹菌がデンプンを分解し、
さまざまな物質を作り出して
食材の味を引き出すとのこと。
1か月半ほど待つと香の物に。
恐るべし微生物、発酵の世界。

 

味噌なんてのは待つ楽しみの真骨頂。
必要なのは自家栽培の青大豆に米麹と塩、
そして、手に入れることができた待つ時間。
春先に仕込み、気温が上がるとともに
ゆっくり発酵をはじめ、一気に進む夏。
秋になり、気温が下がるにつれて
味がのってくる。
その間、小さな味噌樽の中で
繰り広げられている
微生物の営みを想像しながら
ただ待つ、ずっと待つ。

 

さて、「待つ楽しみ」を知った今、
次にわたしができることはなんだろう。
微生物が気持ちよく発酵できる
環境づくりかな、なんて思いはじめた。

あっ、これって…
子育てに似ているじゃないか。

娘にも「待つこと」、「待つ楽しみ」を
教えてもらっていたことに気づく年末。
そして、
娘は“ 発酵 ”はしないけど “反抗 ”はする…。

 


味噌づくりに娘も参加

 


「lineaとむすひ」web

 


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