ゆるぎないもの ー 髙羽千佳

 

ふらっと立ち寄ったデパートの
伝統工芸展実演コーナーで、
マダガスカル産の
ラフィアヤシから取った繊維を編み、
バッグや帽子、小物などにした
「佐原ラフィア」に出会った。

細やかに編まれた、彩り豊かなコースターに
目を奪われていると、
作品がひしめく棚の奥から

「日本でラフィアを作っているのは、
うちだけなんですよ」

という声。
白髪混じりの品のよいおばあさまが、
ラフィアを裂く手を
忙しなく動かしながら微笑んでいた。

編むよりも、染めたラフィアを指先で裂き、
つなぎ目が目立たない様に結んで
編み糸を作る作業に手間がかかること、
そして、100年近く続いた
「佐原ラフィア」の後継者が、
決まっていないことを話してくれた。

 

お財布の中が心細かったので、
ひと目惚れのコースターだけ買うことに。

「あちらのバッグも迷ったんですが、
また今度…。
どこかお店で買うことはできますか?」
とたずねると、

「お話を聞いてくれただけで十分。
実はね、あまりたくさん作れないから、
年に一度のこのデパートの催事でしか
おゆずりしていないの」

 

…小さなショックを受けた。

 

自分で発した“また今度…”には、
「ネットで検索すればどこかで買えるかも」
という思惑が間違いなく潜んでいた。

年に一度の機会のために、
コツコツと手を動かして作ったものを
送りだす作り手。

一方で、ネットでいつでも買えるものたちと
一瞬でも重ねてしまった自分。

 

たった一人で、
日本につなぎとめている技術が
ここにある…。

 

「あの、やっぱり、
あちらのバッグもいただけますか?」

厚みのない財布から、
迷いなくクレジットカードを差し出した。

 

 

2017年07月07日 | Posted in 余談Lab, ひらめきのタネ | | No Comments » 

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