物言わぬ文字 ー 山田和寛

気になるフォントを壁に貼りだす

 

ひとくちに文字を
デザインする仕事といっても、

「レタリング」という
その場限りの一点ものの文字と、
「フォント」という
数百〜数千文字のセットを

デザインする仕事がありますが、
僕はその両方をやります。
今回はフォントのお話しです。

 

世の中にはすでに
無数のフォントがあるのに

なぜ新たなフォントを作るのか、
と聞かれることがありますが、
突き詰めれば自分が本の装丁や
グラフィックデザインの仕事で
使いたいと思えるものをつくりたい、
ということに尽きます。

 

アイデアが湧いたら
いざスケッチをはじめるわけですが、
フォントを作るときにひとつだけ
必ず守るようにしていることがあります。
書体に感情を込めないことです。

 

書体デザイナーは
世にリリースしたフォントが
どのように使われるか選べません。
どのような感情を託されるか分かりません。
良い言葉も厳しい言葉も
乗せることになるでしょう。
なので少なくとも、
罵倒や憎悪の感情を増幅させるような
文字は作りたくないのです。

 

また装丁やグラフィックデザインを
するときも、
言葉を素直に届ける
フォントを選ぶようにしています。

 

文字には大声で怒鳴りそうなもの、
耳元で囁きそうなもの、
千姿万態の表情があります。
フォントは英語圏では
タイプフェイスとも言いますが、
まさに人の顔のようです。

 

ぼくは無表情で多くを語らない
どこにでもいる普通の文字を好み、
物言わぬフォントを作ることを
美徳としています。

 

 


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