昼間の景色 ー いたしおり

平日の昼間、近所の空き地にて

 

わたしは平日の昼間がすきだ。

 

休日でもなく、夜間でもなく。
平日の昼間って、
たらりと緩やかで心地がいい。
ひるま、って響きも、いい。

 

わたしが昼間の景色を初めて知ったのは、
17の夏だった。

 

夏休みの朝、
気まぐれに飛び乗った下り列車。
終点で降りた時には、
もうお昼をまわっていた。

 

じりじりの太陽に頭垂れる草花や、
きらきら光る川面。
街からは学生とスーツを着た人が
居なくなって、静か。
ちいさな子供がよちよちと歩いたり、
それをお母さんがアラアラと追いかけたり、
じいさんばあさんが
ゆらゆらお散歩していたりする。

 

昼間の電車は、
朝のそれがウソのようにがらんとしていた。
車窓からは空がよく見えていて、
見慣れたはずの景色が
あたらしく見えることに、
ハッとしたものだ。

 

いつも教室で眠たくなりながら
授業を受けているとき、
友人たちと馬鹿騒ぎをしているとき、
別の場所にはこんな景色があるんだなあと。
その新鮮さに感動していた。

 

世界には、
知らない時間があるんだと思った。
あれから何年も経って
大人になったわたしは今、
昼間の景色の中で生きている。

 

昼下がり、観光地の真ん中で珈琲を淹れる。
子供たちが遊ぶ公園のベンチで、
事務メールを打つ。
西日の射すアトリエで籐を編んでいる。
がらがらの電車に揺られて、
お取引先へゆく。


午後のアトリエは陽がはいります

 

平日の昼間にオフィスに居なくたって、
学校に居なくたって死んだりはしない。
景色に混ざって仕事をするのも
ひとつの生きる術なのだ。

 

今月よりこちらで文章を
書かせていただくことになりました。
いたしおりと申します。

 

ちなみにこの原稿は、夕方の喫茶店より。
どうぞよろしくお願いします。

 

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