坂道にみかん ー 土井サオリ
朝、駅からの坂道をあがっていると
前方に色艶のいい「みかん」が
ひとつ落ちていた。
一瞬通り過ぎただけで、
そのぷっくりとしたみかんが頭から離れず
どうやって、どんな音を立てて
地面に転がったんだろう…。
落ちたんじゃなくて、置かれたのかも…。
帰りはどんな状態なのだろう…。
さまざまに想像を膨らませながら、
ドキドキしたり、切なくなったり
感情が大きく揺さぶられた。
その丸くて、かわいい感じを
私は見た。いい角度で見た。
なので
「みかんの歌をうたいま〜す。」
と歌いだしたい気持ちを抑えて、
いつもの席にきちんと座った。
ー 居場所 ー
先日出店していたマルシェでの会話
「何をされているんですか?」
>色々していまして
今日は本とCDを出店しています
「なんだか、
枠組みがない感じでいいですね」
そう、言ってくれた。
一言でまとめたくない時
居場所を固定したくない時
「今は」「今日は」と
付け足してしまうのだろう。
その方が都合がいいってだけなのだけど
いまは、きょうは、あしたは、あさっては、
もっと沢山のことをするかもしれないし
全く別のことをしているかもしれない。
「肩書」や「ネーミング」の在り方は
狭めることじゃなくて、
広げることにしていけたらな。
坂道にみかんが居てもいい。
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