#それはまたスパンコールのようでいて ー 青羊(けもの)

 

「cafe ユイット」という喫茶店があった。

 

新宿の”歌舞伎町”手前にあったが、
閉店してしまった。

 

内装も好きだったし、
付属する思い出もある。

新宿のその辺りを通ると、
あるいは、ふとした隙間に
「cafe ユイット」が暗闇の中で、
ぼんやりと浮かび上がったり、
あるいは点滅して光る。

これは自分とその場所とだけの、
何か交信みたいなものだな、と思う。

 

それとは別に、
今年、ずっと通っていた喫茶店も、
閉店することになってしまった。

ご夫婦で42年ほど経営されていた。
そこに私は夫と行っていた。

 

コーヒーや、トマトパスタ、イワシのピザ、
粗食という名前の雑炊、などを
その時々注文した。
そしていつも、おまけに、
チョコレートやらナッツやらを
付けてくれた。

 

行けば、近況を報告したり、
かかっているレコードの話をしたり、
それが自然で温かかった。
それに時間が止まっているような
雰囲気があった。

 

いつかの11月の夜、その喫茶店に入ると、
いつもと違う雰囲気。

ご夫婦の結婚記念らしく、
常連さんとお祝いをするところだった。


「参加していく?」

と聞かれ、

「はい」

と答えた。

 

結婚した年のワインを沢山買い込んでいて、
結婚記念日に
毎年それを開けているのだという。
そのワインを一緒に頂くことができた。

 

閉店してしまうなんて、
私の中では無いことだった。

心のあたりが、スースーする。

 

このコラムを書いている今夜は、
ふんわりと暖かい雨上がり。

道路が水分を含んでいて
鏡のように淡く光を映している。

それはまた、スパンコールのようでいて。

 

写真は「粗食」という名の雑炊です。また食べたい

 

 

 


「けもの」Web

 


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