本当の豊かさを問う /「アレクセイと泉」ー 中村克子

 

前回の映画「火垂るの墓」。

 

よく8月15日の終戦記念日が近い時期に、
テレビで放映しているという印象がある。
正直、また「火垂るの墓」か…
と思うけれど、
観始めると最後まで観てしまう。

 

一年に一度くらいは、
戦争があったという事実や、
その状況下での
人々の暮らしぶりを考えることは
重要なことだと思う。

 

映画を観ることで、
実際に起きた出来事や事件、事故について
考えるきっかけになることがある。

 

そこで思い浮かぶのが、
本橋成一監督のドキュメンタリー映画
「アレクセイと泉」だ。

 

舞台はベラルーシにある
小さな村ブジシチェ。
この地域は1986年に起きた
チェルノブイリ原子力発電所の
爆発事故の影響を受けている。

 

多くの住民が村を離れたが、
青年アレクセイと55人の老人は残り、
原発事故が起こる前と
同じ暮らしを続けている。

 

ブジシチェには “ 泉 ” がある。
村人や犬、猫、馬、畑の野菜や
くだものなど村の生きものすべてが、
その泉の恩恵を受けている。

 

この村の学校跡や畑、森、
採集される植物などから
放射能が検出されたが、
不思議と泉からは検出されなかったという。

 

村人にその訳を聞くと、

「それは百年前の水だからさ」

と自慢そうに答える。

 

泉の水は百年かけて、
地上に湧き出た水といわれている。
村人にとって“いのちの水”であり、
“ 奇跡の水 ” だ。

 

この映画では、
原発事故による悲劇的な出来事を
取り上げている訳ではない。

 

自然豊かなブジシチェの村で、
アレクセイたちが畑を耕し、馬車を引き、
泉に水を汲みに行き、食事を作る。
そんな日々の暮らしが淡々と描かれている。

 

アレクセイたちの暮らしから、
本当の豊かさとは何かを
問われていると感じる。

 

本橋監督は、
著書「アレクセイと泉のはなし」の
あとがきで、東日本大震災で
原発事故が起きたことを踏まえて、
以下のように記している。

 

「そこであらためて分かったことは、
   地球上のすべての生きものは “ 核 ” とは
   共存できないということでした。
   ブジシチェ村のように、
   自然とともに生きている人たちは、
   いのちを大切にする知恵を
   持っていました。
   それはぼくたちいのちあるものみんなが、
   持っているものなのです」


命あるものを大切にしていくこと。
そのためには、
今、そして将来どうしていくべきか。
「アレクセイと泉」は、
そんなことを考えるきっかけになる映画だ。

 

本橋成一監督の絵本
「アレクセイと泉のはなし」(アリス館発行)。
子どもにもわかりやすい内容になっている

 


「青と夜ノ空」Web


2019年05月27日 | Posted in 余談Lab, 中村克子, 映画に学ぶ | | No Comments » 

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