忘れられない本 ー 土屋裕一

 

最近買った小説
『掃除婦のための手引き書』が
僕にとって近年最高のインパクトで、

内容とともに、いつ・どこで読んだのか、
そんなことまでもずっと覚えていそうです。

 

忘れらなれない本はありますか?

 

電動車椅子を使うお父さんのお話
『おとうさんといっしょに』。

長新太さんが信号機の働きぶりを描いた
『ぴかくん めをまわす』。

 

この2冊は、僕の幼い記憶に
焼き付いています。

繰り返し読んだ(読んでもらった)絵本は、
やっぱり忘れられませんね。

 

イギリスの小説家
ラドヤード・キップリングが書いた
『どうしてそんなに物語』は、

僕がsuiranとしてイベントで出店し、
販売していた古本でした。

 

忘れもしないその日の午後、
白髪でやわらかな表情をした男性が、

僕の販売する古本の背表紙を端から丁寧に、
目を細めて眺めていました。

 

本棚越しに対面していたので、
その男性が詩人の長田弘さんだと
気がつきました。
ときどきうなずき、微笑みながら
古本の背表紙を眺めています。

 

しばらくして、1冊の本を棚から引き抜き
僕に渡してくれました。
お値段を伝えようとしたところ、
思いもよらない言葉を掛けられました。

「これは貴重でおもしろい本ですから、
   売らずに、あなたが持っていてください」

このときに長田さんから受け取った本が
『どうしてそんなに物語』。

 

なんだかもったいなくて、
読まずにしまってある、
忘れられない1冊です。

 


「本屋写真館」web

 


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