知らない者同士の人間模様 /「ナイト・オン・ザ・プラネット」ー 中村克子

 

前回の大場 綾さんのコラムに登場していた
「イントゥ・ザ・ワイルド」は
アラスカの大自然を舞台にした映画だ。
主人公の心情とともに
自然の厳しさも描かれている。

 

今回は、自然とは真逆の都会を舞台にした
映画をピックアップしたい。
ジム・ジャームッシュ監督の
オムニバス映画
「ナイト・オン・ザ・プラネット」。
時々、思い出しては観たくなる作品だ。

 

ロサンゼルス、ニューヨーク、
パリ、ローマ、ヘルシンキの5都市で、
同時刻に繰り広げられるタクシー運転手と
乗客とのやりとり。
そこには、それぞれの人間模様が
描かれている。

 

一番好きなのはロサンゼルス編だ。
ウィノナ・ライダーが演じる
タクシー運転手のコーキーと、
ジーナ・ローランズが演じる
映画のキャスティング業をしている
ビクトリアが乗客として登場。

 

コーキーはチューインガムを噛みながら、
タバコをふかして運転するという
不良っぽい雰囲気。

 

車中、ビクトリアは携帯電話で
映画のキャスティングが
難航している話をしている。
その話を聞きながらも、
平静で運転するコーキー。
ふとビクトリアは思いつき、
コーキーに映画に出てみないかと
スカウトする。

 

しかし、コーキーは車の整備工になるのが
夢だと言って、あっさりと断る。
ビクトリアの方は、
こんないい話を断るのは
信じられないといった様子。

 

コーキーには
映画に出て有名になることよりも、
自分のやりたいことや
生活の方が大切なのだ。

 

一見、ただの不良娘と思いきや、
実は自分の将来をきちんと考えている
しっかり者であった。
全くブレないところがかっこいい。

 

その他の都市でも、
ひと癖もふた癖もある運転手と
乗客が登場する。

 

ニューヨークでは、運転がおぼつかなく
英語が通じない運転手と、
代わりに運転することになった乗客。
パリでは、盲目の女性の乗客と
口論する運転手。

 

ローマでは、体調の悪そうな
乗客の神父を相手に
マシンガントークをする運転手。

 

ヘルシンキでは、
乗客3人の不幸な身の上話を聞きながら、
さらに自分の不幸な話をする運転手。

 

タクシーという限られた空間での
知らない者同士のやりとりは
どこかぎこちなく、それでいてコミカルだ。
お互いの距離が次第に縮まっていったり、
逆に悪化した状態になったりとさまざま。

 

悲喜こもごも、
それぞれの人生が存在していることを
感じさせてくれる作品だ。

 

 


「青と夜ノ空」Web

 


2019年07月27日 | Posted in 余談Lab, 中村克子, 映画に学ぶ | | No Comments » 

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