言語で変わる世界 ー 真子みほ

 

昨年、私の勤めている美術館に
初めての海外貸出しの依頼が
舞い込みました。

 

イタリア北部の美術館で
「20世紀前半の日本の絵画の展覧会」
という日本国内から見ても
マニアックな内容。
要請があった作家も
メジャー所ではありません。

 

日本の大学の先生が間に入っているし、
その美術館も良いところらしいし
ということで承諾したのですが、
当館では誰も海外貸出しの経験がない。
たまたま最初に依頼のメールを
受けた私は他館の学芸さんに聞きながら
手探りでやり取りをしてきました。

 

作品は1930~50年代のもので、
キャンバスを木枠に張り
簡単な縁を付けただけ。
海外に貸すには
アクリルとバックパネルをつけて
保護しておきたいねということで、
この費用をイタリア側に
負担してくれるよう依頼。

 

どうにか振込を待つだけになったのですが、
この交渉時のメールのやり取りが
面白かったのです。
なんとなく自分の人格が
変わってくるんですね。

 

私は語学が苦手で、
もう辞書を引き引きなのですが、
英語で文章を書くというのは、
主語に意識的になります。

「書類を送ります」

ではなくて

「私があなたに書類を送ります」

と文章を作らなくてはなりません。
相手との関係性が明確になり、
自分の立ち位置を
常に意識しなければならない感じ。
見えてくる風景さえ変わりそうです。

 

この面白さを引き連れつつ、
今年9月の展覧会開催時には
クーリエ(作品の立会人)として

初の海外出張に行けるかも!

と楽しみにしていたのですが、
なんと展覧会は来年に延期。

 

さて消費税が上がる前までに
振込はしてもらえるのでしょうか。
ドキドキしております。

 


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