普通に生きて普通に死ぬ /「エセルとアーネスト」ー 大場 綾

ブルーアワーにぶっ飛ばす」、
ロードショーが終わらないうちに劇場へ。

 

なるほど、ちゃんとしてない!
状況も最後まで変わらない。
いや一つだけ、本人の気持ち。
これは変わった。

だからもう彼女は、
ブルーアワーを越えてぶっ飛ばして行ける。

 

夏帆の演技が絶品。
田舎のイヤさが圧巻。
シム・ウンギョンが天真爛漫。
でんでんがお客様に
お出ししたくないお父さん。

それらが、終盤で全部吹っ飛んだ。

 

おばあちゃん。
これおばあちゃん映画。
いや違う。
弱く小さくなったおばあちゃんが
主人公にあるものを
こっそりくれるシーンで、
数年前に死んだ父方の祖母を
強烈に思い出したのだ。

というか老人ホーム入所以降の
最晩年の祖母とのコミュニケーションを。

 

号泣した。
周りの客は普通にしていた。
この1ヶ月ほどは
老いとか死とか家族とかと
濃厚に関わる日々で、
そこにぴったりとはまったのもあった。

 

その間に息抜きがてら映画館で観たのが
「エセルとアーネスト」。
これもまた老いと死と家族が
テーマと言える。
「スノーマン」や「風が吹くとき」などで
著名なイギリスの漫画家
レイモンド・ブリッグスが、
自身の両親をモデルに描いた作品が原作だ。

 

前情報ほぼゼロ、
アニメーションは癒してくれるはず
ひとつよろしくとばかりに
岩波ホールの席に着いた私がバカだった。
あの恐ろしい「風が吹くとき」の
作者だということを失念していた。

一見ほのぼの「スノーマン」の
ラストの無情さもかなりのものだ。

 

夫妻の死とその前段階の描写が
オブラートゼロなのだった。

どちらもただ物体として存在する亡骸。
人生って身も蓋もない。
でもそれでは、
ブリッグズはどんな気持ちで
二人の最後をこのように描いたのか。

そしてそこに至るまでの
二人をあのように描いたのか。

普通に一生懸命生きて
普通に死んだ夫妻の話。

 

 


大場 綾ブログ「kusamura.com」

 


2019年11月13日 | Posted in 余談Lab, 大場綾, 映画に学ぶ | | No Comments » 

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