三兎を追うものは ー 赤木美名子

 

夏からすべてのバランスを欠いた。

 

このコラムが書けなくなった。

 

パタンナーと米農家のわらじに
もんぺ製作所のわらじも履いてみたら
畑の管理はお粗末なもので
まるで原野の野生栽培。
稲作は草取りのタイミングを逸して
収穫までその尻ぬぐい作業と深い後悔。

 

5年目にして初めてづくし。
品質を左右する時期に

40度超えで高温障害。
我が家の目の前の田んぼにも
イノシシが堂々登場。
美しい棚田に電気柵、くやしかった。

 

昨晩、数mの至近距離で
イノシシと遭遇した。

30年前はイノシシは
新潟には住めなかったのに
里山の荒廃や小雪で
足の短いイノシシが暮らしやすい場所に
なってしまった。

 

過疎や温暖化のボディブローは
バランスを欠いたわたしにじんわり効いた。

 

夏の終わりに秋冬野菜の種を蒔くと
世話ができない自分を
追い詰めることになるだろうと、
思い切って畑をあきらめた。

 

おかげで仙台でclueの永井さん
夜遊びしたり、
やりたかった藍染めもんぺに
多くの時間を割くことができた。

 

毎年漬けてきた粕漬け大根も
お休みするはずだったのに
村のお母さんたちが
一斉に大根を干すもんだから
やっぱり漬けたいと師匠の畑から大根調達。

 

150本の大根を冷たい湧き水で洗う寒行は
稲刈り以来の満たされる時間だった。

 

 

干し大根のあるいつもの
12月の風景を撮ろうと
カメラをのぞきながら気づいた。
暮らしが生む風景がたまらなく好きで
わたしには農と向き合う時間も必要だと。
畑からでなく、
干し大根からの今年最後の収穫だった。

 

 

昨年まで二兎を追ってやっとこさ
二兎得ていたけれど
三兎を追うものは…。

 

決断の時期が近づいている気がする。

 


「lineaとむすひ」web

 

コメント1件

  • 清水 秀人 より:

    適当、いい加減人間の私から見ると、美奈子さんは真面目過ぎます!でも、それだから善いものが生み出せるんでしょうね!

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