思いの込め方 ー yuri

 

何年か前に旅に出た時の話です。

 

東京に帰る日、
お土産をと、
ご家族でやられているような一軒家の、

町のちいさな和菓子屋さんに入ったんです。

 

店内には誰もおらず、何度か声をかけると、
「はあい」と妙に間の抜けた
明るい声が聞こえて、

奥の方からぱたぱたと
スリッパの音を響かせて
おばちゃんが出てくる、

そんなお店でした。

 

その明るさと対照的に
飾りっ気のない店内は、

静けさと清々しさに満ちていました。

 

ショーケースに並ぶ和菓子も
凛としていて、

おばちゃんの空気と相俟って、
少しだけ買うつもりだったのに
ついついいくつも注文したんです。

包装は簡単で大丈夫です、と伝え、
少し待って渡されたものは、
箱に詰めて包装され、
シンプルながらも
紐掛けまでしていただいたものでした。

 

驚いて顔を見上げるとおばちゃんは、
うふふ、と笑って言いました。

私は何度も何度も、これからもずっと、
きっと繰り返し思い出すでしょう。

「お嫁に出すんだから、
    お化粧くらいしなきゃね。」

包まなくていいとお伝えしたけれど、
それでも包装してくれたのは、
おばちゃんの信念というか、
気持ちの込め方だったろうと思うんです。

 

自分の仕事への誇り。
作った和菓子への愛情。
お客様をおもてなしするひとつひとつを、
なにひとつおろそかにせず、
大切なものを、大切にくるんで、
そっと差し出す。

 

リボンがけなどのプレゼント包装。
のし紙や水引。
形式がなぜ、形式として存在するか。
それは思いの込め方、伝え方なのだと、
あの時お手本として見せてもらいました。

 

雨の降る、とても寒い日でしたが、
とてもあたたかい気持ちで
東京に帰りました。

 

私は焼菓子屋ですが、
あの静かな和菓子屋さんのようになりたいと、
ずっと思っています。

 


「CAFE & BAKE momomo」web

 


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