普通ではない場所、普通の人々/「シリアの花嫁」 ー 大場 綾

 

「マリッジ・ストーリー」をNetflixで観た。
前にも克子さん
映画館で観てよかったと話していた
「ROMA」をNetflixで観た。


サブスク便利。
気が散って印象が散漫になるという
デメリットはあるけれど。

「マリッジ・ストーリー」は
気が散るどころではなく
エンドロールまで観て
余韻を味わうことになった。

 

圧巻の長回し口論以外にも、
奥さんのニコールが
出会いを語る場面がよかった。
ある日のある舞台の客として居合わせて、
お互いに「ハッ!」となった二人。

そこで素直に気持ちに任せ、
関係が始まった。

 

「シリアの花嫁」は出会いとかないままの
結婚式の半日を描いた映画だ。
花嫁はゴラン高原に住んでいる。
1967年、もとはシリア領だったこの地に
イスラエルが侵攻し、
地域の7割を占拠した。
イスラエルの国籍を申請することもできたが
大半は拒否。
住民は国籍を失った。

 

結婚式当日はシリアの新大統領が
就任する日でもあった
(今も現役のアサド大統領)。
住人は警察に監視されながら
就任祝いのデモを行っている。
花嫁の父は政治活動で
投獄された経歴があり
デモへの参加も禁止されているが、
引き留める家族を振り切って参加し
警察署長に目をつけられる。

 

花嫁の姉、異教のロシア人と結婚して
勘当同然の長兄、イタリアあたりで
商売をしている次兄が出てきて
4人きょうだいだねと思っていると、
谷間にある国境沿いのフェンスの向こうに
シリアで大学に通う弟が現れ、
谷のあちらとこちらで
拡声器越しに近況報告をしあう。

 

主要登場人物それぞれが困難を抱えている。
それは個人的なことというよりも
国と国の問題、宗教の問題によって
引き起こされているように見える。

 

結婚相手はシリアに住む
テレビスターの従兄だ。
写真だけで結婚を決めた。
今日検問所で書類を受理されたら
花嫁はシリア人となり、
国境を越えたら二度と故郷には戻れない。

それだけでも大変だし、
ポンとハンコを押して
終わるかと見えたのに、
直前に変更されていた
シリア側の処理方式を、
イスラエル側が頑として認めない。

 

中立的立場の赤十字の女性が
花嫁のパスポートを持ち、
非武装地帯のあちらとこちらにある
両国の事務所を何度も行き来する。

国が勝手に決めた制約の中で
普通の人々が普通の営みを
なんとか遂げようと手を尽くす。

一般の人としての無力感を強く感じた。

 

などと紹介しているけれど、
この文章を書くまで私は
イランとシリアの区別が
ほとんどついていなかった。

位置関係もさっぱり。

 

地図を見ると西側から順に
イスラエル、ヨルダン、シリア、イラク、
イラン、アフガニスタン。

年末から連日ニュースで見かける
地域ばかりだ。

そこから更にパキスタン、インド、
中国、海を渡って韓国を通り、日本。

遠いけれども
海と地面でつながっている場所で
私たちと同じような一般人が住んでいて、
普通の生活を奪われている。

 

 


大場 綾ブログ「kusamura.com」

 


2020年01月13日 | Posted in 余談Lab, 映画に学ぶ, 大場綾 | | No Comments » 

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