北の果て、網走に、再び ー yuri

 

大地はどこまでも広く、
ころころと変わる天気は雪と光が
交互に降り注ぎ、真っ白な世界に
仄かで鮮やかな陰影をもたらす。
マイナス15度の空気はいっそ心地よく、
今までのどんな寒さにも到底及ばない
質量のある寒さだった。

 

林道を車で走っていると、突然のブレーキに
何事かと思ったら大きなエゾシカが4頭、
目の前を通り過ぎていった。
暖冬の影響か潮の流れか
流氷は来ていなかったが、
荒れたオホーツク海の向こう側に
世界遺産の知床半島が見えた。
凍てつく知床連山に
幽かな恐怖心を覚えながら、
見上げた空に
天然記念物のオジロワシが飛ぶ。

 

3年前の夏に一度ここにきた。
その時人生ではじめて
『カルチャーショック』を受けた。
海外に行ったって海に潜ったって
空を飛んだって受けなかった衝撃。
大地の力強さと圧倒的美しさを前に、
東京に帰って数ヶ月、
私はふさぎ込んでしまった。
消化できないまま
東京のコンクリートに埋もれることで
あの景色を忘れようとした。

 

夏の30度からマイナス20度にもなる、
気温差50度の四季。
東京のそれとは
比べ物にならないほど力強く、
景色と季節が密接していて、
瞼の裏に3年前の夏が蘇ったところで
今見ている景色が同じ場所であるとは
信じがたかった。
当然のようにそこにある雄大さは、
私を3年前と同じ分量打ちのめす。

ひとつ違うのは、
その衝撃がとても心地よかったことだ。
私はこの3年、ちいさな活動なりに
精一杯生きてきた。
大自然を前に、
人がひとりできることなんて何もないが、
それでも生きなければならないのなら、
できることはただ生きるということだけだ。
打ちのめされる痛みの分、
ああ生きているなあと思った。
網走を離れる日、
オホーツク海に流氷がきた。

 


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