やさしいおに ー 浅野理生
「ふくは〜うち!」「ふくは〜うち!」
今年の節分、みなさんは
どんな風に過ごされましたか?
子供の頃の節分の思い出として、
北海道の我が家では、
大豆ではなく落花生をまいていました。
おじいちゃんが
新聞紙で折った紙箱の中には、
豆のほかにチョコレートや
アメやお菓子がたくさん入っていて、
それを家中にまいてくれました。
家族中が歓声をあげて
部屋のあちこちにまかれたお菓子を
無我夢中でひろう。
キラキラした色とりどりの包み紙と
みんなの笑顔と福は内の掛け声。
私の父は船乗りで、
家に帰ってくるのは
年に数回だった我が家では、
父が外に出ているのを配慮して
「鬼は外」は言わないのが習わしでした。
今でもその習慣は抜けず、
鬼は外と口にするのは
何だか気持ちがソワソワするのです。
節分、そして鬼と聞いて思い出すのは
『おにたのぼうし』という絵本。
おにたは気のいい子どもの黒おにです。
古い麦わら帽子をかぶってツノをかくし、
困っているにんげんをこっそり助けます。
恥ずかしがり屋で優しいおにたは思います。
(にんげんっておかしいな。
おにはわるいって、きめているんだから。
おににも、いろいろあるのにな。
にんげんにも、いろいろいるみたいに。)
ある節分の夜、
豆をまかれて居場所を失ったおにたちは
豆まきをしていない
一軒の家にたどり着きました。
そこにいたのは
病気で寝たきりの母を看病する
小さな女の子。
おなかをすかせた女の子が
母についた優しいウソを聞いて
おにたがとった行動とは…。
いわさきちひろさんの叙情的な絵が、
更に切なく心に染み入り、
こわい鬼のイメージが変わる一冊です。
優しさも卑しさも、
すべては自らの心の中に。
心をオニにして、
優しさを育んでいきたいです。
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