いいテンポ ー 土屋裕一

 

落語家で人間国宝の
柳家小三治さんのエッセイ『ま・く・ら』は
まるで落語を聴いているような
読書体験です。

 

タイトルにもある「まくら」とは
落語の「本題」に入る前の小咄のことで
小三治さんはまくらの名手でもあります。
その穏やかな顔から放たれる
べらんめえなしゃべり口は威力抜群。
文字にしたときにも軽妙なテンポは健在で
まあとにかくおもしろくて困っちゃいます。

 

もうひとり、歌人の穂村弘さんも
独特な風合いのテンポを刻む方です。
短歌を詠む “歌人” でありながら
歌集よりも圧倒的に多いエッセイ集を
出版しています。

 

主戦場はわずか31字の世界なので
エッセイに使われる言葉の数々も
やはり相当厳選されたものなのでしょう。
小気味良さと不穏な間。
共感と心配が入り交じる穂村さんの生活に
ニヤニヤが抑えられません。

 

柳家小三治さんと穂村弘さん。
言葉を操るおふたりの作品は
ぜひ音読もしてみてください。
思わず誰かに読んで聞かせたくなる
いいテンポです。

 


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