世界が広がる ー はしもとみお

 

家で過ごす事が多くなり、どこへも行けず、
世界が狭く小さく、
ワンルームになってしまったような
気持ちになったりもした。

 

そんな時、彫刻をする時の
目の動きに立ち返る。
視点を変えるという事を、
彫刻制作では頻繁に行う。
今はどこへも行けないのではなく、
どこにも行かなくて
ただ生きていればいいのだ。

 

視点を変える方法はただ一つ、
知恵、知識を身につける事だ。
持てる知識の数だけ、見える視点は増える。
視点が増えれば、世界は急速に広がるのだ。

 

里山でのこの季節は、
庭の草刈りに追われる。
一週間でも放置すると、マムシが這う
雑草天国が出来上がってしまう。
仕事の展覧会も全てが中止となり、
彫刻を制作しても発表する場が今はない。
幸い、時間だけはたくさんできた。

 

草刈りに明け暮れると、
地中の世界が途端に開けた。
見ていなかった世界が広がったのだ。

 

そこは無数の根っこのネットワークで
張り巡らされており、地中を走る、
ランナーと呼ばれるツル達が織りなす
植物達の大運動会が開かれていたのだ。
植物は土の中で自由自在に動いているのだ。
ランナーを辿っていくと、
空へと繋がって伸びている。
ツル系の植物達は地中で動き、
天空へ向かう。
空を編むのだ。

 

私はこの春、草刈りで見つけた
このツル達で籠をたくさん編んだ。
すると草刈りは単純労働でなくなり、
ツルというランナー達の
素材集めの時間となった。
世界がものづくりの素材で
満ち溢れていると感じた瞬間だった。
素材は買うものではなく、
見つけて集めるものなのだ。

 

長い自粛生活で見つけた、新しい視点は、
私が一点も動かずして
世界を確実に広げてくれた。
みなさんにもきっと、この緊急事態の中で、
そんな瞬間があったのではないかと思う。
考える時間を、
平等にもらったのかもしれない。

 

 


「はしもとみおホームページ」


コメント1件

  • 亀井玲子 より:

    『今はどこへも行けないのではない
    どこにも行かなくていい
    ただ生きていればいい』
    この言葉にスゥーと心が軽くなった気がしました。 自粛と言う言葉に閉じ込められた気がしていたのですが、視点を変えればなんなりとなるんですね。
    みおさんの創作活動やお話をこれからも楽しみにしています!。
    明日からいなべで開催のグループ展、県内在住なので行かせて貰えるとワクワクしています。

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