「普通」の一家が孕むひずみ/「家族ゲーム」 ー 大場 綾

 

克子さんが「アス」から
即座に連想したという「パラサイト」、
私も今年の正月二日に観に行った。
有楽町の映画館を出ると
金持ち一家みたいな人々が行き交い、
まだ話が続いているみたいだった。

 

貧乏一家の兄と妹は
大学に落ちて無職という身の上を偽って
金持ち一家の家庭教師となり、
それぞれ見事な指導ぶりを披露する。

 

家庭教師。
ときたら、森田芳光監督の「家族ゲーム」。
30年近く前の作品だ。

 

こちらの家庭教師は三流大学7年生の吉本。
ポーカーフェイスで少々暴力的で
小学生用の植物図鑑を常に抱えていて
飲み物は基本一気飲み。
クセは強いが、
クラスの最下位チームだった教え子は
ぐんぐん成績を上げて、
見事に進学校への合格を果たす。
鍛えられて喧嘩も強くなる。

 

 

雇い主の沼田家は両親と長男の慎一、
教え子の次男茂之の4人で
東京湾岸の団地の上階に住んでいる。

 

金持ちでも貧乏でもない「普通の」一家。
お互いにあまり向き合ってはいない。
食卓は普通じゃない。
作業台のような細長いテーブルに
夕飯時は4人一列に並ぶ。
レオナルド・ダ・ヴィンチの
「最後の晩餐」と同じ構図だ。

 

茂之の合格祝いが
この映画の最後の晩餐となる。
中央、キリストポジションに吉本。
4人でも窮屈なのに5人並んで座るから
ぎゅうぎゅうに密着する。

 

テーブルと手前のワゴンには
料理と酒が並び、こっちもぎゅうぎゅう。
乾杯のあと一同は
ごちそうを淡々とむさぼる。
飲み食いのエネルギーとは裏腹に、
会話はまるで盛り上がらない。
偏ったエネルギーによる歪みで
物体が破損するように、
やがてものすごいカオスが勃発する。
飛び交う食品。殴られた者のうめき。
いっそこっちの方が楽しそう。
吉本が突如テーブルのものを
全部床にぶちまけてパッと去る。

 

映画はそこでは終わらず、
冒頭とあまり変化の見られない、
一家のその後を映す。
吉本はなんだったんだろう。
救世主なのだろうか。
救う義理はなかったので帰ってしまった。

 

 


大場 綾ブログ「kusamura.com」


2020年07月15日 | Posted in 余談Lab, clue topics, 映画に学ぶ, 大場綾 | | No Comments » 

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