ぼくと、妻と、リトアニア人 ー 渡邉知樹

 

3週間ほどハネムーンと題して
ロシアとバルト三国を列車で旅をした時のこと。

 

寝台列車の2等室は4人部屋。
部屋に入ると左右に2段ベッドがある。
この日同室したリトアニア人をはじめ、
旅で出会ったほとんどの人が
英語を全く話せなかった。

 

なにかしら
コミュニケーションが取りたいと思って、
似顔絵を描いたり、トランプをしたり、
持ってきた日本の缶詰や
納豆を食べてもらったりしていた。

 

インターネットが使える環境になく、
こちらで分かるロシア語は
「地球の歩き方」の巻末に
すこし並んだロシア語だけ。

 

オーチンプリヤートナ(はじめまして)、
ズドラストヴィーチェ(こんにちは)など
無駄に挨拶を連発した後、
いくつか本を見ながら質問をした。

 

質問に答えられてもロシア語だから
基本的に分からないのだけど、
相槌のダー(はい )を言ってると
意外と分かった気になれて、
会話らしくなるのが不思議だ。

 

そして

「家族は何人いますか?」

という質問をした時だった。
それまでは書かれていたカタカナを
そのまま読んでいただけで通じていたのに、
急に彼の顔が歪んだ。

 

何度かイントネーションを変えて

「家族は何人いますか?」

とロシア語で質問したのだけど、
何を言っているんだ? と言った様子。
そしてなぜだか周りを
キョロキョロと見回しはじめた。

 

いよいよ伝わらないので諦めて、
読んでいた箇所を指差して
相手に見せた時だった。

家族は何人いますか?

という質問をしていたつもりが、
もう一つ下の段の

「全部で4人います」

という箇所を言っていたのだ。
何度も何度も、
ぼくと妻とリトアニア人の
3人しかいない部屋で

「全部で4人います」

と。

 

素朴なコミュニケーションを
していたつもりが、
知らぬ間にホラー映画のような
セリフを言っていることもあるみたいです。

 

とはいえ間違えたことがきっかけで、
結果的に3人で腹を抱えて
笑うことになったのですが。

 

 

 


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