『山のなかの試着室 』 ー 赤木美名子
「まるでサバイバルですね。
着くまで何度も心配になりました」
とお客さま。
最高の誉め言葉です。
流行を追って一気に作り、
人が集まる場所に
店舗を構えて売るアパレル。
そんな時代に逆行するかのように
「もんぺ製作所」は採寸をして
お客さまの体形、好みのテイスト、
身に着けるシーンに合わせて
1枚ずつ作る受注生産。
店頭に並んでいる服に
自分を合わせるのではなく、
自分に合った服を作るというコンセプト。
お客さまをより深く知りたいと思うから、
わたしたちのことも知ってもらいたい。
わたしたちが暮らす豊かな自然の中で
1本のパンツが生まれる時間を
お客さまと楽しみたい。
そんな半ば押しつけの思いから
新型コロナ渦中の6月に
『山のなかの試着室』をオープンしました。
「 “こんなところ” に
お客さまは来ないだろう」
と夫。
オープンしてすぐに
見覚えのあるお名前で予約のお問い合わせ。
昨春、ブランドを立ち上げてすぐに開催した
上越高田展示受注会で、
新聞社の取材を受けました。
その時、いらした方のコメント取材に
快くご協力いただき、
紙面を飾ってくださった
記憶に残る男性のお客さまでした。
試着室で1年2か月ぶりに再会し、
こみあげてくる想いを抑え
2本目のもんぺパンツづくりが
はじまりました。
お客さまが選んだのは
正藍染もんぺパンツ。
藍染工房見学、ポケットの刺繍柄選び、
をしていただき、
今は、3か月に渡る製作期間の最中です。
ファストファッションが台頭し、
服は使い捨ての時代。
いいものを長く着たい。
服が作られる背景を自分の目で見てみたい。
そんな美しい価値観を持っているお客さまが
オープンから
3か月が過ぎようとしている今日も
“こんなところ”までいらっしゃいました。
もんぺパンツを作るための道中は、
ちょっとしたサバイバル。
スリルのおまけつきです。
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