田中くんち ー 鶴岡達悦

田中くん。友人の家具工場にて

 

先日、富山に住む友人の田中くんの家に
夫婦で泊まりました。
利賀村というところで、
一年に一回開催される
お芝居の祭典に行きがてらの訪問でした。

 

田中くんは林業で生計を立て、
築80年の古民家に娘さん2人と
奥さんと暮らしています。
僕らが訪ねた時、奥さんと娘さんたちは
ご実家に帰られていませんでした。

 

田中くんに教えてもらった温泉に行って、
僕らが田中邸に20時頃着いた時、
彼は利賀村に
お芝居を観に行っていて不在で、
帰って来たのは22時くらいでした。

 

夜は虫たちの鳴く声と、
家の前を流れる用水路の水の音しか
聞こえません。
一年ぶりに会った僕らは、しょうもない話を
大声でするようになるまで飲み食いして、
深夜1時すぎには床に就きました。

 

東の空が白み始めると、

ニワトリが餌くれ~ !!

とけたたましく鳴き叫び、
無理やり起こしてきます。
妻はぐっすり眠っていましたが…。
田中くんは沢登りをしに
5時半頃には出て行きました。

 

家の中を探検したり、
二度寝したりした後の朝食は、
前夜田中くんが買って来てくれた
晩飯の残りの中華料理です。
冷蔵庫から出して
レンチンしていただきました。
食後にはコーヒーをドリップして、
朝からガッツリです。

 

おなかいっぱいになって
ゴロゴロしていると、
なにやらもよおしてきます。
人の家だとトイレは気を使うものですが、
だれもいないので気楽です。
昼前までゆっくりさせてもらって、
田中くんちには正味半日ほど
滞在できました。

 

僕らが訪れたのは9月の頭の
まだまだ暑い時期でしたが、
屋内は終始ゆるやかな風が流れて
空調は必要ありません。
間取りは、戸口から入ると土間があり、
目の前が台所、右手が居間、
その奥に寝室がある他、
鶴の恩返しに出てきそうな
大きな織り機のある部屋と、
田中くんの作業部屋があります。
天井は高く、
それぞれの部屋も広々しています。

 

使われていない2階の屋根裏には、
大家さんが住んでいた頃から
時間が止まっているような空間が
ふた部屋ある他は、
だだっ広い板張りです。
燻され黒く光る床板は、
そのまま一階の天井となっています。

 

目を外に向けると、
もう少しで収穫を迎える黄金色の田んぼを、
山に向けて縫うようにある農道沿いに、
ぽつんぽつんと民家が並びます。
集落は15戸からなり、
どの家も母屋の他に納屋があり、
農作業のためのトラクターや
道具が納められています。

 

田中くんちの裏には
彼が5年前引っ越して来た年に、
集落の人々がお金を出し合って改修した
お宮があります。
なにかと行事があって、
集まる機会も多いそうです。

 

一方、僕らが住んでいるのは
二階建ての長屋のいわゆる
テラスハウスというやつで、
角部屋ではありますが、
お隣さんと壁を隔てて生活しています。
階段の登り降りから換気扇のオンオフまで、
生活の諸動作音が聞こえてきます。
聞こえているということは
聞かせてるわけで、
抜き足差し足とまではいきませんが、
歩くのにも気を使うのが常になっています。

 

農村で暮らしていくには
また別種の気づかいがあると思いますが、
一泊だけの客としては
周囲に気兼ねすることのない
静かなひと時をすごして、
普段の生活がいかに窮屈か
気づかされました。

 

たまに日常を脱しないと、
日々の生活の繰り返しの中で、
それがすべてではないという
当たり前のことを忘れてしまいますね。

 

次はどこに行きたいかな。

 


2020年10月17日 | Posted in ひらめきのタネ, 造園家 鶴岡 達悦 | | No Comments » 

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