愛してやまない家の庭 /「モリのいる場所」 ー 中村克子

 

前回の大場綾さんのコラムを読んで
思ったのが、
お葬式がテーマになったり、
シーンとして出てくる映画は
結構多いということ。
お葬式は亡くなった人のための
ものだけれど、
親族や周りの人の気持ちの
整理をつけるような場なのかもしれない。

 

伊丹十三監督の「お葬式」は、
お葬式を執り行うための
現実的なところを表現しつつ、
ユーモアを交えながら
人の感情の繊細な部分も巧みに描いている。

 

そしてこの映画では、
そうそうたる俳優が
出演しているのもすごい。
山崎 努、宮本信子、菅井きん、
大滝秀治、笠 智衆、津川雅彦など。

 

なかでも山崎 努は伊丹監督の代表作
「タンポポ」「マルサの女」
「静かな生活」にも出演している。
登場すると、
何だか目が離せないと思う俳優だ。

 

ここ数年で、山崎 努の出演映画で
記憶に残っているのが「モリのいる場所」。
通称 “モリ” こと画家、熊谷守一と
奥さんの暮らしを描いた物語だ。

 

モリさん役が山崎 努、
あっけらかんとした
明るい奥さん役が樹木希林。
この二人が座っているだけで安定感がある。

 

モリさんはあごひげをのばし、
仙人のようだ。
実際の熊谷守一のことを
それほど詳しく知らないが、
写真で見る限りそっくり。
山崎 努=モリさんとしか思えない。

 

植物や動物が好きで30年間、
自分の家の庭で過ごしている。
ほとんど家の外には出ていない。

 

奥さんに

「行ってきます!」

と言って毎日、
それほど広くない庭を散策する。
とんがり帽子をかぶって
2本の杖をついて歩く。

 

草花やそこに生息する虫や鳥、
池の魚などをジーッと観察するのが日課だ。
アリを観察する時は這いつくばって
アリの目線で見るという徹底ぶり。

 

一番笑ってしまったのは、

「池に行ってくる」

と言って歩いていくシーン。
途中で、目に留まった草花に夢中になり、
さらに色々と観察していたら結局、
池にたどり着かずに家に戻ってきてしまう。
まるで子どものようだ。

 

一見、庭の風景は
何も変わらないようでいて、
モリさんにとっては毎日、
何かしらの変化や気づきがある。
モリさんはそれらを絵に描いている。

 

家の前にマンションが建設されるという話が
持ち上がっても、
大切な庭と家はこれまでと同じだという
モリさんと奥さんのスタンスがかっこいい。

 

映画では、長年連れ添った夫婦の様子や、
風変わりなお客さんが訪ねてくる
おもしろいエピソードも盛り込まれている。
またファンタジーっぽい要素もあり、
楽しく観ることができる作品だ。

 

作品集「熊谷守一 いのちを見つめて」では
草花や鳥、虫、猫などの絵が収録されている

 

「青と夜ノ空」web


2020年11月27日 | Posted in 余談Lab, 映画に学ぶ, 中村克子 | | No Comments » 

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