歩く日記 ー 真子みほ

 

先日出張で金沢に行った際、
金沢21世紀美術館で
村上慧さんの展示を見ました。
村上さんは以前から、
その活動に興味を持っていた作家さんです。

 

村上さんは「絵描き」と名乗っています。
様々な土地の家をペンで描いています。
今回の展示はその家の絵が、
ベニヤ板で作られた長い長い屏風で
迷路になったような空間に
たくさん貼られています。

 

さらに絵の下には
その場所での人々とのやり取りが
文字で打ち出されています。
迷路の所々には村上さんが歩いたり
人と話したりしている映像。
そして村上さんが
歩くとき背負っている「家」。

 

そう、この写真に写っている本
『家をせおって歩いた』(夕書房 、2017年)は、
本当に家を背負って
国内の様々なところを歩いた
村上さんの日記なのです。

 

「なんで家を背負って歩いてるの?」

という質問の答えは
ぜひ本を読んでほしいので書きませんが、
東日本大震災が
そのきっかけとなっています。

 

家というものの存在や、日々の生活領域、
人と人との関わり方について、
淡々としたユーモアと
静かな熱量が感じられる
とても良い日記です。

 

中でも私の好きな箇所は、
土地を持っている人に交渉して
家を一晩置かせてもらうことにすると、
そこが寝室という拠点になり、
近くのコンビニがキッチン、
銭湯がお風呂場、公園がトイレ、などなど
家の機能が町全体に広がると気づく瞬間です。
また一歩一歩歩いて移動することで、
あの町とこの町が確かにつながっていると
知ることができるところも。

 

読む側の身体も頭も、広がりをもって
物事を捉えることができるような
そんな気持ち良さを感じました。

 


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