賞味期限 ー 横山俊二

 

牛乳パックと卵を買うときは、
必ず手に取り裏返して日付を確認して、
1日でも新しい物をと棚を探ってしまう。

 

そのくせ自宅の冷蔵庫に有る
買い置きの納豆やヨーグルトなどは
期限切れでも、まあ平気平気と
自分の味覚を信じて躊躇なく食す。

 

多少過ぎても自分用なら大丈夫、
もったいない、捨てられない。
食品表示が厳しくなって、
消費者の感覚も今の世に慣らされている。

 

半世紀以上製造している「ぬれせん」。
初めは口コミで徐々に広がった。
当然だが地元の客がほとんど。
贈答用に使っていただけるのは
ありがたいが、
これがトラブルの始まりで、
周知されるまでは苦情が多かった。

 

特に

「土産にせんべいもらったけど
湿気ている(怒)」

「どうやって食べるの?」

その都度説明して…
だ・か・ら「ぬれせん」なのです と。

 

ぬれせんは焼きあがった熱いせんべいを
醤油のカメにどぶづけ(漬け込む)して
出来上がり。
糖類を加えないので醤油そのもの、
とてもしょっぱい(塩辛い)。

 

ぬれせんほど醤油をしみこませずに
サッとつけて、湯げだつ内に食べる。
硬くもなく、柔らかくもない絶妙な食感、
長続きせず店頭でしか味わえない一品。
これが賞味期限58秒「ゆげたち」。
遠路はるばるわざわざ来店のお得意様へ
店主からの御礼として差し上げた。

 

しかし、この名前がつく前は、
お得意さんに差し出しても
すぐには手を出さず、
もって帰る人が多かった。

 

確かに目の前で焼き上げた煎餅を、
湯気立つまま差し出されても
即座には手を付けない。
熱いだろうと思い込みに支配されて、
冷めるまで待とうとする。
説明の間に「旬」を逃してしまう。

 

たどり着いたのがこの言葉
「賞味期限58秒」。
もちろん1分でも差し支えないが、
焦り具合が桁違い。
どうすれば、あせって食べてもらえるか、
こんなに短い賞味期限の食品は
無いだろうと思い「のぼり」を掲げた。
こののぼりがマスコミを引き付けた。

 

 

「ゆげたち」を楽しみに
来店するお得意さんに差しあげる
店主からの御礼が、
メディアのおかげで独り歩き。
せんべいに興味がなかった人たちへの
新たな近づきができた。

 

宅配で居ながらにして手に入る
便利な世の中。
店に出向かなければ得られない
ここにしかない品物が無いと、
田舎のへんぴな路地裏では商って行けない。
文化の違いにも焦点を合わせたい。
そのためには先ず語学かな?

 

柏屋米菓手焼き本舗WEB


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