ずっと描いてる/「マルメロの陽光」、「ジャコメッティ 最後の肖像」 ー 大場 綾

 

前回克子さんが取り上げた
「モリのいる場所」、
私も「お葬式」を観ながら思い出していた。
なんだか嬉しい。

 

モリこと熊谷守一は画家。
でも絵を描くシーンはまったくなかった。
終わり近くなってようやく
2階のアトリエに上がるも、
その扉は私たちの目の前でパタリと閉じる。

 

一方、画家がただただ
絵を描いている映画もある。
まず、ビクトル・エリセの
「マルメロの陽光」。

 

スペインの画家アントニオ・ロペスが、
庭の小さなマルメロの木を描く
二ヶ月間のドキュメンタリーだ。

 

最初は油絵だったが
天候に邪魔されて断念、
鉛筆での素描に切り替える。
油絵は来年続きを描くのかと問われ、

「あれは今年の絵だから
来年は来年の絵を描くよ」

と答える。

 

12月になり熟した果実が地面に落ちる頃、
淡々と道具を片付ける。
光と構図には偏執的にこだわっていたのに、
終わらせるときは潔い。

 

そしてスタンリー・トゥッチの
「ジャコメッティ 最後の肖像」。

 

ジャコメッティが描き続けるのは
アメリカ人批評家
ジェームズ・ロードの肖像画。
こちらはフィクションだけど
ロードの手記に基づいた作品だ。

 

正面顔の鼻の頭から描き始める。

そこさえ決まればあとは
自然に絵になっていくはず、

とジャコメッティ。
が、そこがどうにも決まらない。

 

できてきた!

と飛び上がって喜んだ次の日に、
イヤ勘違いだったーと絶望して全部消す。
ひたすら描いているのに
永遠に完成に近づかない。
ロードは帰国便を何度も延期して
制作に付き合う。
穏やかでお茶目なロペスと、
炎のようなジャコメッティ。

 

共通するのは
作品が完成しないということと、
完成への道を模索し続ける姿勢の
途方もない真摯さ。

 

それから周囲の人たちが魅力的で、
画家と彼らとの関わり方が
観ていて楽しいのも共通していた
(ジャコメッティはちょっと大変そう)。
これは「モリのいる場所」も。

 

 


大場 綾ブログ「kusamura.com」


2020年12月14日 | Posted in 余談Lab, 映画に学ぶ, 大場綾 | | No Comments » 

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