世界の変わり目を生きる /「日の名残り」ー 大場 綾

「マンハッタン殺人ミステリー」、
克子さんが書かなかったら
知らないままだったろう映画。
感謝感謝。

 

妻のキャロルが謎解きに熱中する動機は
好奇心のみにあらず。
隣の住人が見舞われた不幸を
自分たち夫婦の倦怠期を打破する
スパイスに利用している。
ひどっ。
いのちが軽い。

 

でも映画が公開された1993年、
社会人になりたてだった私が
見ていた世の中は確かに軽薄だった。
少なくとも都会では。

 

若者の採用されたい会社の筆頭が
電通そしてマスコミ系という時代。
そのど真ん中にいた人たちは
そのときのノリのまま
年を重ね地位も上がって、
そしていまだに自分たちの感覚が
ど真ん中のつもりなんだな。
近頃次々と湧きあがる
炎上問題を見てはそう思う。
そしてその都度、彼らと同様の感覚が
自分の中にもまだ少し生きているのを感じて
ゾッとする。

 

同じ年に公開された映画に
「日の名残り」がある。
舞台は1920年代から
1956年までのイギリス。
主人公は初老の執事スティーブンス。
また私の話で恐縮だけど、中二病時代は
執事になってみたいとか思っていた。

 

何があっても冷静沈着にして無口、
主人のために完璧に職務を遂行する紳士。
スティーブンスは
このイメージどおりの執事を父に持ち、
尊敬し、父に倣って生きてきた。

 

雇い主もまた、
英国紳士の正解みたいな人だった。
しかし第2次世界大戦中に
ヒトラーに肩入れして失脚し、
戦後は失意のうちに逝去した。

 

古い主人も古い時代も去った。
新しい雇い主はアメリカ人の富豪だ。
前の主人とは真逆の人柄で、
ジョークなんか言ってくる。
新しい時代の象徴のような相手だ。

 

これまでの自分の執事としての正しさは、
彼のニーズと一致しない。
どうしたって時代は変わる。
それに合わせて
自分を変えるのか変えないのか。
年を重ねても立派に働いてきても
誇りを持っていても、迷いに絡め取られる。

 

どちらにしても
まずは変わりつつある世界に
目を見開くことかな、と思う。
スティーブンスが
ジョークを身につけようとするように?
何しろどうしたって
時代の中で生きて行かなければならない。

 

 


大場 綾ブログ「kusamura.com」


2021年04月15日 | Posted in 余談Lab, 映画に学ぶ, 大場綾 | | No Comments » 

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