家族で囲んだ食卓の記憶 /「最初の晩餐」ー 中村克子

 

個人的に、韓国映画を観た後は
その余韻を引きずることが多い。
前回の「ペパーミント・キャンディー」は
ずっしりと重い…。

 

大場 綾さんが言っていたとおり
“ 時系列逆回転映画 ” だ。
主人公ヨンホがどのように生きてきたのか、
時間をさかのぼっていく。

 

ヨンホの人生は、
時代に翻弄されている。
若い頃と年を重ねてからでは
まるで別人格のようだ。
後悔してもしきれないのが切ない。

 

日本映画「最初の晩餐」も
時系列逆回転映画とまではいかないが、
登場人物が時間をさかのぼり、
家族のことに思いを巡らす。

 

この作品では、
家族にとっての思い出の料理が
いくつも登場する。
目玉焼き、みそ汁、焼き魚、餃子、
キノコ入りピザ、すき焼きなど。
どれも、家族にとって
懐かしく大切なメニューだ。

 

物語は、父親の葬儀のために
次男の麟太郎が久しぶりに
故郷に戻ってくるシーンから始まる。

 

お通夜では、
親戚に振る舞うために注文したお弁当を
母親が勝手にキャンセルしてしまう。
母親は、父親の遺言だから
自分で料理を作ると言い出す。

 

最初に出てきたのは目玉焼き。
親戚たちは驚くが、麟太郎は約20年前、
自分たちが家族になった日のことを
懐かしく思い出す。

 

目玉焼きは、母親が虫垂炎で入院した時に
父親が初めて作ってくれた料理だった。
その後も、
次々に母親の手料理が出されていく。

 

これをきっかけに、
長女の美也子と麟太郎には
さまざまな記憶や感情がよみがえってくる。
家族で暮らした日々、
父親や母親への思い、
長男のシュンのことなど。

 

もともと父親と母親は再婚同士。
父親と美也子(11歳)、麟太郎(7歳)、
そして母親とシュン(17歳)は
新しい家族になった。

 

最初、ギクシャクしていた家族の関係は
食卓風景でよく表現されている。
朝食で、子どもたちが味噌汁は
赤味噌か白味噌かで口論になる。
これを聞いた母親は、解決策として
次の日から合わせ味噌にする。

 

また魚の小骨が苦手な美也子のために、
母親は何も言わずに
焼き魚の小骨を取り除いて
食卓に出してくれていた。
仲良く暮らすために、母親は
細やかな気遣いをしてくれていたのだ。

 

家族は少しずつ歩み寄りながら、
だんだん打ち解けていく。

 

ただ、あることをきっかけに
シュンは22歳の誕生日に突然、
家を出て行ってしまう。
美也子と麟太郎には
その理由が明かされずに、現在に至る。
シュンが出て行った時点から、
家族の時間は止まっていた…。

 

思い出の料理、
そして一緒に囲んだ食卓の記憶を通して、
家族の時間がまた動き出す。
これってすごいことだと思う。

 

映画の最後に、
父親が子どもたちの前では普通に食べていた
魚やキノコが本当は苦手で、
一番好きなのは甘いおはぎだったと
わかるシーンは、
父親の愛情が伝わってくる
微笑ましいエピソードだった。

 

 

「青と夜ノ空」web


2021年05月28日 | Posted in 余談Lab, 映画に学ぶ, 中村克子 | | No Comments » 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA