断捨離 ー 渡邉知樹

 

先日、引っ越しが決まって
家の片付けをはじめた。

 

捨てる物と捨てない物とを、
右と左に分けていく作業。
必要なもの、大好きなもの、大切なもの、
いつか使いそうなものなんかは、
ほとんど迷うことなく捨てない方へ。

 

逆にもうさすがに使わなそうなもの、
あまり好きじゃないけど
なんとなく捨てれなかったもの、
古くなったから引っ越しを機に
新しいものと変えたいものなんかは、
捨てる方へ。

 

そうやって簡単に
右か左に分けれる場合は良い。
問題はその中間にあるものや、
物語を持ち過ぎているものだ。

 

もしこの写真を捨ててしまったら
今後2度と、
親戚とマザー牧場に行ったことを
思い出すことはなくなるのかもしれない。
昔働いていたバイト先の、
顔は覚えてるけど
名前の分からなくなってしまった人、
小学生の頃に着ていた
ダサい紫のTシャツ、実家のポスター、
お腹周りがまだすっきりとしていた頃の父。
1枚の写真が無くなるだけで、
思い出せなくなることもあるかもしれない。

 

もちろん写真だけじゃなくて、
物には色々な思い出が付帯するものだ。

 

本や洋服、食器、手紙、
お土産にもらったキーホールダーや、
よく分からない調味料。
充電器の無い昔の携帯や、
もう行かないであろう
店のポイントカードだって、
ぼくは捨てられずにいたりする。

 

今はもう閉店してしまった
国立のたまらん坂下にあった
「ビデオマーケット」という
レンタルビデオ屋の会員カードだって、
引っ越しのたびに眺めては
捨てずに取っておいてある。
捨ててもいいなとは思いながら
結局は捨てられずにいて、
ここまで来ると
もはや棺桶に入れたい気分だ。

 

ひとつひとつの「物語」を
精査するのは大変だ。
そもそも断捨離する必要があるのか
考えはじめると、いっそのこと
なにも捨てずに引っ越してしまおうと
開き直ることも出来る。
それはそれで物を捨てない、
物語を手放さない、
そういう良さもあるだろう。

 

さらに言うと断捨離とは
自分の生き方を考えることであり、
余生を考えることでもある。
どんな家に住むとか、
どんな生活をするかとか。

 

 

さて、引っ越し。
引っ越しまでの短い時間の中で、
できる限りひとつひとつの物を見つめながら
段ボールに入れたり
ゴミ袋に入れたりする作業。

 

所有者としてのせめてもの誠意として、
もしくは、自らへの慰めとして、
残された時間、ひとつひとつの物と
じっくりと向き合えたらと思っています。

 


ブログ/渡邉知樹のぺぺぺ


2021年07月03日 | Posted in 余談Lab, ひらめきのタネ, 絵本作家 渡邉 知樹 | | No Comments » 

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