意図せずにアウトローの道へ /「デッドマン」 ー 中村克子

 

先日、都内で開催の
「JIM JARMUSCH Retrospective 2021」
にて上映されていた
「デッドマン」を久しぶりに観た。

 

ジム・ジャームッシュ監督の12作品を
上映ということで、最初は全部、観ようと
意気込んでいたけれど、
結局3本しか観ることができなかった。

 

前回の「ハピネス」で登場していた
“ えげつない ” 人たち。

 

19世紀を舞台にしたアメリカの西部劇
「デッドマン」にも、
えげつない人たちが登場している。
「ハピネス」とは、また違うえげつなさ !?
いや同じか !?

 

えげつないをネットで検索すると、
ものの言い方ややり方が露骨、
ずうずうしく無遠慮、あくどい、
人情味にかけるなどの意味が出てくる。

 

「デッドマン」の登場人物の多くがあくどい。
物語だからと言ってしまえばそれまでだけど、
気に入らない人間には銃を向けて
簡単に撃ち殺す世界だ。

 

ジョニー・デップが演じる主人公の会計士、
ウィリアム・ブレイクは
仕事を求めて西部の田舎町にやってくる。

 

しかし、ひょんなことから
殺人事件に巻き込まれ、
濡れ衣を着せられたまま逃亡することになる。
3人の殺し屋が雇われ、
ウィリアムを捕まえたら
懸賞金が出るという事態に。
この殺し屋のうち、
最後まで生き残る殺し屋が
一番あくどいかも!?

 

胸に傷を負ったまま森をさまよう
ウィリアムを助けたのは、
ネイティブ・アメリカンのノーボディ。
イギリスの詩人、ウィリアム・ブレイクを
こよなく愛するノーボディは、
ウィリアムが同じ名前だと知ると興味を持つ。

 

二人は追手から逃げるために旅に出る。
しかし、ノーボディは
ウィリアムを親身になって守ると思いきや、
途中で一人残してどこかへ行ってしまったりと
意外にマイペース。

 

逃亡生活をしていく中で、
ウィリアムの顔つきが
変貌していくのも見ものだ。
自分の身を守るためには
敵を銃で撃つしかなく、
次第に冷酷な面も出てくる。
アウトローへの道をまっしぐらだ。
意図せずして、ウィリアムも
えげつない人間になってしまったとも言える。

 

旅をする中で、ウィリアムは
自分の命が絶えるのが近いことを感じる。
肉体はどんどん弱っていくが、
精神は研ぎ澄まされていくような感覚が
あったのではないだろうか。

 

ウィリアムの最期は、ノーボディが
水先案内人のようにカヌーで送り出す。
その時のウィリアムは
とても穏やかな表情をしていた。
えげつない人間から
まともな人間に戻る瞬間だったのかもしれない。

 

この映画の根底にある死生観。
それはただ単に悲しいというのではなく、
生まれたら死ぬという
当然のことを淡々と表現している。

 

 

「青と夜ノ空」web


2021年07月29日 | Posted in 余談Lab, 中村克子 | | No Comments » 

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