声 ー yuri

 

岐阜県にある、
雄大な木曽川を望む場所で
古本屋を営んでいる友人夫妻がいる。
ふたりの間に
子供が生まれたと聞いたのでやってきた。

 

着いて10日が経つ。

「ゆりちゃんのごはんが食べたいな。」

という言葉を真に受けて、
ごはんを作るかわりに
滞在させてもらっている。

 

周囲は山々に囲まれている
静かな場所だけれど、
しばらくするとすぐに気づく。
川音や湧水や、
虫や鳥や蛙や、
なにやらわからない
生き物の声が終始聞こえる。

 

家には夫妻と赤子と、そして私。
加えて4匹の猫がいて、
合計8つの生き物が山で暮らす日々は、
赤子が泣きやんだかと思えば猫が鳴き、
猫が大きな蛙を捕まえてきては
私が悲鳴をあげ、
空はダイナミックに雲を製造し、
草木はどんどん
季節の移り変わりを告げ続ける。
そうこうしている間に
赤子はどんどん大きくなって、
夫妻はなんだか笑っている。

 

 

ごはんを作る以外は
山を眺めたり本を読んだり
子守をしたり猫を撫でたり。
友人夫妻は平らなひとたちで、
私がなにをしていようとしていなかろうと、
さほど気に留めていない。
実にのんびり過ごしているけれど、
なんという忙しさだろう!と、
殆ど感動してしまう。

 

東京にいる時の、
やることが山積みの、
どんどん生産を続けていく忙しさとは
まったく趣の異なる、
生きる、ということの忙しさ。

 

子が泣くのに、
猫のあくびやその狩りに、
草花の交代に、
なんの不思議もないように、

『ただそうである』

ということを、
すべての物事が訴えかけてくる。

 

ここに来なければいけない、
という確信を
リュックにぎゅうぎゅう
詰め込んでやってきた。

 

なるほどねえ。
などと思いながら、
岐阜のお米はおいしいなあ!と
東京ではあまり食べないお米を
今日もおかわりしている。

 


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