奇跡的に完成した映画 /「リック」ー 中村克子

 

ユーゴスラヴィア出身の
エミール・クストリッツァ監督の作品
アンダーグラウンド」。
この映画は見逃していた!
監督の作品では「黒猫・白猫」を
観たことがあったくらい。

 

大場 綾さんが紹介していた通り、
「アンダーグラウンド」は奇想天外な物語。
でも、戦争や紛争など厳しい状況が続いた
ユーゴスラヴィアの歴史を
そのままストレートに表現するのではなく、
ファンタジー要素や凝った映像、
音楽を盛り込んで仕上げているのが、
奇才と言われる監督の表現なのだと思う。

 

ユーゴスラヴィアつながりで
今回、取り上げるのが
ブラッド・ピット初主演の「リック」。

 

この作品は1988年に
ユーゴスラヴィアで撮影。
編集作業が終わる前に内乱が起こり、
フィルムがバラバラになって
紛失してしまったそうだ。

 

その後、プロデューサーが
フィルムを探しまわって
なんとか回収して編集。
奇跡的に完成した映画と言える。

 

青年リックは、太陽の光を浴びると
皮膚がただれて死んでしまう
難病を患っていた。
彼の一家は治療法を探して
アドリア海の小さな島にやってくる。

 

外に出る時は全身、
革の黒いスーツを身につけるリック。
顔もマスクで覆っている。
この姿でバイクで出かけると、
周りからは好奇の目で見られてしまう。

 

家の中でも黒ずくめの服装で過ごす。
素顔で過ごせるのは
光を遮った暗い部屋の中だけ。
彼にとっての息抜きは時々、
海辺にある隠れ家で過ごすことだった。

 

リックの良き理解者である父親が
いい治療法を見つけるものの、
それは3日間しか効果がないという。

 

暗闇で一生を過ごすより、
短くても思いっきり太陽の光を浴びて
自由に過ごすことを選んだリック。
街のお祭りで出会った
女の子と恋をしたり、
海でイルカと戯れたり…。
3日間を過ごす中で、
だんだん肌に異変が出てくるが
そんなことはお構いなしだ。

 

父親に別れを告げて、
バイクで走り去っていくラストシーンは
切ないけれど、心に残る場面だった。

 

デビューして間もない
23歳のブラッド・ピットは、
役柄のせいもあるが素朴で美しく、
儚いイメージだ。

 

演技力はどうだろう!?
と感じるところもあったけれど、
この年齢の時にしかできない
役柄があると思うので、
そういう点でも貴重な映画かもしれない。

 

 

「青と夜ノ空」web


2021年08月29日 | Posted in 余談Lab, 映画に学ぶ, 中村克子 | | No Comments » 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA