ジャズに取りつかれた人たち /「セッション」 ー 中村克子

 

前回の大場 綾さんのコラムを読んで、
映画の中では音楽が重要な役割を
果たしていることに改めて気づく。
作品の世界観をより豊かに
表現するのが音楽なのだ。

 

ブラッド・ピット主演の「リック」と
ロシアのアニメーション作品「話の話」、
2つともバッハの曲が
使われているのがおもしろい。

 

音楽そのものがテーマになっている
映画も多くある。
その中でもある意味、衝撃的なのが
「セッション」
(デイミアン・チャゼル監督作品)だ。

 

一流のジャズドラマーを目指して
名門の音楽学校に入学したアンドリューと
鬼教師として知られている
フレッチャーの師弟対決の物語。

 

フレッチャーの教え方は
とにかくスパルタだ。
演奏のダメ出しは言葉だけでなく、
ビンタをするし、椅子も投げる!

 

さらに相手のプライベートなことまで
持ち出して罵倒し、
プレッシャーをかけて追い込む。
そこから這い上がってくる者しか
相手にしない。
観ているだけでも、
鬼教師の怒りの顔がトラウマになりそうだ。
このやり方では、
パワハラやモラハラで訴えられるのでは!?
と思う。

 

案の定、物語の後半では
フレッチャーの行き過ぎた指導が
問題となり音楽学校を辞任させられる。

 

指導を受けるアンドリューの方は
最初、緊張と恐怖のあまり泣いてしまう。
しかし、何度もくじけそうになりながら
悔しさをバネに、
血のにじむような練習を繰り返す。
とにかくトップクラスの演奏家に
なりたいという想いが強い。

 

大切なコンテストに向かう途中で
アンドリューは、車の運転をミスして
交通事故を起こす。
それでも血を流しながら会場まで行き、
ドラムをたたこうとする。

 

2人とも狂気の沙汰だ。
ジャズに取りつかれてしまったような
状態と言える。

 

物語の中では、
フレッチャーの優しい一面が
映し出されるシーンがあるが、
アンドリューを追い込む姿からは
底意地の悪さしか感じられない。

 

ラストの演奏シーンでも、
フレッチャーは底意地の悪さを発揮。
これは愛のムチか!?

 

アンドリューは一旦、
演奏をあきらめるものの、
そこから奮起してすさまじい気迫で
ドラムをたたく。
フレッチャーが驚くほどの圧巻の演奏だ。

 

2人の間には信頼関係があった上で
厳しい練習をしていたと思いたいが、
本当のところはどうなのだろうか。

 

一流のジャズドラマーになりたい
アンドリューと、
それを育てたいフレッチャーの
利害関係が一致しただけなのか。
高みを目指す者しか分からない
何か突き抜けた関係なのかもしれない。

 

ところで、デイミアン・チャゼル監督は
「セッション」の後に、
ガラリと雰囲気の違う
ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」を
製作しているのも興味深い。

 

 

「青と夜ノ空」web


2021年09月28日 | Posted in 余談Lab, 映画に学ぶ, 中村克子 | | No Comments » 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA