同じ人が撮ったとは/旅のおわり世界のはじまり ー 大場 綾

 

克子さんはデイミアン・チャゼルの
「セッション」について

「観ているだけでも、
鬼教師の怒りの顔がトラウマになりそうだ」

と書いていた。
ほんとっすよこえーっすよ。

 

二作目「ラ・ラ・ランド」は
真逆のカラフルさと賑やかさでびっくり。
三作目「ファースト・マン」は未見。
ずいぶん落ち着いた内容らしい。
制作中らしい新作は
どう出来上がってくるだろう。

 

同じ人が監督した作品は、
大抵は同じようなテイストだ。
「こういう映画を撮る人」と
認知されることで
次の仕事が来るってことでもあるだろう。

 

私がイラストレーションを学び始めた頃、
先生や営業に行った先のデザイナーが
口を揃えて

「どんなものが出てくるかわからない人には
怖くて頼めない」

と言っていた。

 

イラストレーターに限らないだろう。
カレーを食べに来たのに
パフェを出されてもな、という話だ。

 

それで「旅のおわり世界のはじまり」。
黒沢清監督。
他の作品については、
不安の煮こごりみたいな空気の中を
右往左往する人々を
虫かごの外から観察するような
冷淡さを感じる。
コワー、そこがスキー、と思っている。
屋外シーンさえ閉塞感で窒息しそう。

 

主人公葉子は前田敦子。
ウズベキスタンでテレビ番組を撮影中の
レポーターの役である。

 

淡々と仕事をがんばる葉子。
何度もえらい目に遭うが
じたばたしない。
武士のよう。

 

一方、ひとりで歩く場面がしばしばあり、
そのときは迷子のおさな子のように見える。
不安で胸をいっぱいにしながら
一心に前を見て。

 

そう、この映画では
不安は葉子の中だけにある。
不安が最高潮に達した場面で
照明が不自然にドドーと暗くなる。
黒沢清作品でしばしば出てくるやつ。

 

他の作品では
こちらを不安に引き摺り込む演出が、
葉子の心を代弁していた。
この映画の視線はとても優しいのだった。
同じ人がこういうものも
作れるのかと思った。
さわやかで美味しいパフェに
びっくりしつつ満足して店を出たのです。


大場 綾ブログ「kusamura.com」


2021年10月16日 | Posted in 余談Lab, 映画に学ぶ, 大場綾 | | No Comments » 

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