孤独ミーツ孤独 /「ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を」ー 大場 綾

ホテルニュームーン」は、
克子さんのスクラップブックによると、
筒井武文監督が
イラン(そしてテヘラン)の風景や人々に
一目惚れしたことから
生まれた作品だという。

 

わりと急な坂があって、
でも平野に向かって広がってもいる。
主人公親子が歩く街の道の背後には、
雪をいただいた大きな山が
いつもそびえている。
どんな街かな?
神戸みたいな感じ?
それとも富山?

 

ファイト・ヘルマー監督の
「ブラ!ブラ!ブラ!胸いっぱいの愛を」
も、舞台になった場所を
映画に残したいというのが
撮影の動機だったらしい。

 

アゼルバイジャンの街バクー。
イランの北側に位置し、
テヘランからは海岸沿いに
車で10〜11時間。

 

バクーと高原をつなぐ列車がある。
列車すれすれに民家が立ち並ぶ場所も通る。
住人は線路の上に紐を渡して洗濯物を干し、
列車が来た時だけ急いで引っ込める。
軌道上に椅子とテーブルを出して
営業する食堂まである。
街から出ると突然まったいらで
草もほとんど生えていない広大な平原。
終点は山地で、
石造りの小さな家々が並ぶ村。
三つの全然違う環境なのだ。

 

運転士のヌルランは
山地の家に一人ぼっちで住んでいる。
定年を迎えた彼の勤務最終日。
誰かが干していたブラジャーが
列車に引っかかる。
ヌルランは退職後の日々を、
ブラジャーの持ち主を探しに
費やすことにした。
「ハ?」と思いますね。
でも話が進むにつれて
彼の孤独が心に沁みてくる。

 

線路沿いのさまざまなつくりと
さまざまな色の家。
そこに住むさまざまに
変わった人たちを前に敗退に次ぐ敗退。
全編セリフが一切なく、寓話のようだ。

 

それとは別に、
線路沿い食堂の外の犬小屋に暮らす
男の子が描かれる。
笛を吹いて線路を走り、
列車の接近を
ひとびとに知らせるのが仕事だ。
身寄りはなく、誰にも顧みられない。
物語はヌルランと少年の思いがけず
幸せな顛末で終わる。
ポカーンと観ていたら
最後ににっこりさせてくれる
不思議な作品だ。

 

 


大場 綾ブログ「kusamura.com」


2021年11月13日 | Posted in 余談Lab, 映画に学ぶ, 大場綾 | | No Comments » 

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