子は親の鏡。では祖父母は…? ー 岩井 巽
「たっちゃんは隔世遺伝だね」
僕が幼少期のころに
母親にかけられた言葉です。
妹と比べて、顔立ちがどうも
両親に似つかなかった僕。
いったい誰に似たのか、
家族の中で僕だけ耳が大きかったのです。
ある日、おじいちゃんが
僕と同じ耳の形をしていることに気づき、
「おじいちゃんに似ることを<かくせい遺伝>と言うんだよ」
と母に教えられました。
<かくせい遺伝>という
少し難しい語感と、
数百人に1人の現象という
” 選ばれし者 “感に
テンションがあがった当時の僕は、
小学校に入ってすぐに
「ぼくは隔世遺伝なんだー!」
と言いふらしていた覚えがあります。
—
そんなエピソードがきっかけとなり、
「おじいちゃん」や
「おばあちゃん」の影響を、
なんとなく頭の片隅で意識しながら
生きてきました。
耳の形が似ていたおじいちゃんは、
孫が大好きで僕にとっても優しくて、
よく板チョコをくれました。
しかし母に聞くと、実はおじいちゃんは
パチンコにハマっていて、
換金できなかった時の
「ハズレ」品の板チョコを
いつも持っていたのだそうです。
パチンコは弱かったけど、
釣りでその才能を発揮できたようで、
大会のトロフィーが
何十個も戸棚に並んでいました。
—
一方、おばあちゃんは
真逆に貧乏性で、賭け事とは程遠く、
スーパーで貰ったビニール袋一枚でも
捨てられない人でした。
それはとても
エコで良いことだとは思うのですが、
いつもおばあちゃんの台所には
何年ものの食材が溢れ、
掃除するのがちょっと大変そうでした。
—
その性格を見事に<かくせい遺伝>で
受け継いだ僕は、
テレビゲームに夢中になりすぎて
他のことがおろそかになったり、
コレクター気質で、
小さいパーツなどを捨てられず
収集してしまうような中高生でした。
勉強もせず、たびたび親には
呆れられましたが、
その性格のおかげで、美術大学に進学し、
今はデザイン業を仕事にしています。
「子は親の鏡」と言いますが、
毎日一緒にいる親から受けている影響は、
それが「当たり前」になりすぎて、
アイデンティティと
気づきにくいような気がします。
血縁関係ですが、たまに会う
他人のようなポジションの
祖父母の背中をみて、
良いところは真似てみたり、
反面教師的に真似ないでみたりして
今の自分の人格が
できてきたように思います。
子=親の鏡
親=祖父母の鏡
となると、
祖父母の背中を写してきた子どもが
僕なのかもしれません。
Web「東北スタンダード」
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