徳江さんはほんとうは/「あん」ー 大場 綾

 

「東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート」、機会があればぜひ観たい。

 

去年のオリンピックは、エンブレムの盗作、
トライアスロン会場の汚染、
開催時期の酷暑、銭ゲババッハ会長、
開会式担当者の相次ぐ降板、
開催後の感染爆発、
わたしの乏しい記憶だけでも
これだけの問題が山積みだった。

 

開催中止を望む署名は
45万筆も集まった(私も署名した)。
ツルッと無視されたが。

 

年が明け、東京オリンピック2020の
ドキュメンタリー映画を作成している
映画監督をNHKが追った番組内で
インチキな場面があったという問題で、
今またオリンピックがホットだ。

 

「私たちが招致した、みんな喜んだはずだ、だからあなたも私も問われる」

という河瀬直美監督の言葉も
物議を醸している。
問われてたまるか。

 

でもこの番組は観ていない。
監督の作品も未見。
てことで「あん」を観た。

 

春、永瀬正敏の千太郎が雇われ
店長をしているどら焼き屋に、
樹木希林の徳江さんが
バイトをさせてくれと現れる。

 

満開の桜並木から始まって、
季節の移ろいが美しい。
店のドアを開け放っている場面では
店の中を吹き抜ける風まで感じられそう。
映像は気持ちがいい。

 

一方、人間は
気持ちいい人ばかりではない。

 

徳江さんの作る
あんのおいしさに惹かれて
店に並んだ人々、
多分同じ人々の偏見によって
徳江さんは辞めざるを得なくなる。
自分のあんが人々の口を
喜ばせるという喜びを手放して。

 

硬く閉じていた千太郎の心は
徳江さんとの交流の中で開き、
自分の人生へ踏み出す。
希望を感じさせて映画は終わる。

 

でも徳江さんの人生は?
徳江さんはよかったの?
喜びはそのとき限りとわきまえて、
大人しくひっこんで。
よくなくない?

 

犠牲者を美しく語るのは
結構危険なことだ。

 

監督は「いい」として
撮っているのかな、どっち?
こういうふうに
モヤモヤさせたかったのかな?

 

どうしても監督の姿勢を
問うてしまうのだった。
とても微妙だ。

 

 


大場 綾ブログ「kusamura.com」

 


2022年01月16日 | Posted in 余談Lab, clue topics, 映画に学ぶ, 大場綾 | | No Comments » 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA