誠実で真面目で魅力的/「街の上で」ー 大場 綾

前々回のコラムのタイトルの含みを
克子さんが拾ってくれたこと、
地味に嬉しかった。
そこから「ベルリン・天使の詩」という
広がりも素敵だった。

 

さて次はと考えながら
今泉力哉監督の「街の上で」を観た。
そしたら途中で
ヴェンダースの話が出てきた。あら。
レストランで他の客の会話が
聞こえちゃったというシーン。
今回この映画にしたのはそれもあるけど、
とにかくよかったので。

 

主人公は下北沢の古着屋店員の青君。
この青君に、冒頭で彼を振る彼女、
近所の古本屋の店員、
自分の作品への出演を依頼しにくる
若い映画監督、そのスタッフの大学生、
という四人の女性が関わってくる。
関わるけど触れ合わない。
関係がねっとりしない。

 

青君役の若葉竜也は「葛城事件」では
心をこじらせきった果てに
凄惨な事件を引き起こす次男の役だった。
どす黒いものを立ち昇らせて、
説得力がすごかった。

 

そのイメージのまま観たせいで
冒頭のシーンはハラハラした。
明らかにめんどくさい男だったし。
幸い(?)、青君も他の人も
やばいことはやらかさない。
ちょっとひどいと
言えなくもないことはする。
でもそのときそのときで
ごまかさず行動した結果とも言える。
誰もが真面目に誠実に生きている。
ズルをしない。

 

出番が少ししかない
他の人々のシーンもとてもよくて。
ヴェンダースの話をしていた青年たちとか。
その店のバイトと別のお客の
小さいエピソードとか。
青君行きつけの飲み屋の常連男性とか。
その男性に会いに店に来る人とか。

 

マウント取って見下す側に回って
他人を嗤ってなんぼ、
いいコネあってなんぼ、
という風潮の中で青春時代を過ごしたので、
この若い人たちの清々しさが
宝物みたいに見えた。
街の再開発と一緒に
消えたりしないでほしい。

 

クライマックスは路地でのわちゃわちゃ。
ここはめちゃくちゃ笑った。
上空から見守る天使の視点で。

 

 


大場 綾ブログ「kusamura.com」


2022年02月15日 | Posted in 余談Lab, clue topics, 映画に学ぶ, 大場綾 | | No Comments » 

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