直人くん ー 鶴岡達悦

 

直人くんは溜り場にいる
先輩のうちの一人でした。

 

僕が行っていた高校は
服装は自由でしたが、
彼は詰襟学ランにローファーを
合わせていました。

 

日の丸の国旗をボールペンか何かで、
ローファーのつま先の削れたところに
ラフに描いた物を履いている、
ちょっと不思議な人でした。

 

先日、近所で用があったついでに
その溜り場に寄ってみました。
駅や学校の周囲はすっかり綺麗になって
隔世の感がありますが、
そこは当時のままでした。

 

何人かはSNSで繋がっていますが、
もう会うことの無くなってしまった
友達や先輩たちの姿が浮かびます。
直人くんはその時の仲間で
唯一今もリアルに交流のある人です。

 

二十歳ぐらいの頃は彼の実家の町工場、
長谷川製作所の空いた一画を
使わせてもらい、
自分や仲間の作品を展示、
発表したり、パーティーをしたりして
遊ぶ場を提供してもらいました。

 

その頃お世話になった仲間は
各地に散らばっていますが、
東京に帰ってくると数年前に建て替えて
現代仕様になった製作所に集まるのが
恒例となっています。

 

彼の周りには、
一癖ある人たちが集まって来ます。

 

直人くんは年の瀬になるとお正月のお飾りを
街中で売っているのですが、
去年その仕事を手伝っていたユーヤさんは
顔や手にもタトゥーが溢れ出ています。
世界各地を絵を売りながら
放浪してたと聞きました。

 

ユーヤさんを手伝いとして連れてきた、
直人くんの実家のリフォームを
今している大工さんは、
雑誌の編集者さんでもあるそうです。

 

こないだは、
違法薬物不法所持で捕まった
元従業員の身元引受人にもなっていました。

 

そんなはみ出した人も分け隔てなく集めて、
直人くんはレンタルルーム業を
生業としています。

 

レンタルルームとは、
サラリーマンが休憩したり、
宿泊するのにも使うことのできる
多目的施設です。
東京の主要繁華街にお店を
いくつも展開して、このコロナ禍で
かなり大変だと思いますが、
会うとそんな様子は
おくびにも出さず、飄々としています。

 

直人くんは二児の父でもあるのですが、
お父さんとしての姿は
意外にもとても模範的です。

 

そんな様子を見て、
様々な人々が出入りする
カオティックな現場でこそ
常識が肝なのかもなと思ったりしています。

 


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