きょうは何の日? 結果発表の日 ー 田本あゆみ
窓を開け放つことが増えて
あったかい風が入ってくると、
寝かせていた味噌の
ふたを開けようと思い立つ。
仕込んだ量は10キロ。
3分の1ほどを取り出し、
かたちが残っている大豆と麹は
潰してなめらかにする。
おいしくできた。
今回はそれに醤油しぼりが加わった。
昨年、季刊誌『うかたま』で
醤油造りが手引きされていたのだ。
蒸した大豆と煎った小麦に、
パウダー状の麹菌を振りかけ
繁殖させて醤油麹をつくる。
これが工程のほとんどで山場である。
仕事机の足元のホカペの上に、
温度計をさして新聞紙と
電気毛布で包んだバットを置き、
数日をともに過ごすことに。
レシピの説明文と写真と、
バットの中の変化をじっと見比べる。
32℃、34℃、30℃……。
3日で終わるところが
7日かかってしまった。
増えていく黄緑色のふわふわした菌糸は
極小の生き物であった。
ルーペで覗いたり
我慢できず手でいじってみたりした。
麹が完成すれば塩水に投入し、
たまに攪拌して、
あとは放置して菌に丸投げだ。
成功したのか失敗したのかわかるのは
しばらく先。
時間というのは直進ではなく、
12か月を1周として
螺旋状にぐるぐると回って
進んでいるのではと感じる。
この時季に恒例となった
1年前の結果発表は、
流れていく時の上に一点を打つような
行事になっている。
さらし布で漉されて
赤茶色の液がしたたり落ちる。
少しすくって味見をすると、
しょっぱくて甘くてまさしく醤油であった。
これに合わせる食材を考えると
胸が膨らんだ。
手のひらから台所中から
味噌と醤油の芳しい香りが漂っていた。
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