いけずな姐さん初コンタクト ー 浅野知子
アタイは流しの仲居。
コノウラミ ハラサデ オクモノカ…
仲居業一年生のはじまりはじまり。
初勤務日から
怒濤の詰め込み教育と実務が始まり、
あっという間に劣等生になりました。
そして私はとある姐さんからチクリ…
チクリと針を刺され始めたのです。
舌打ち、無視は序の口で、
朝食会場にて炊飯器の上に
手を添えて待機していると、
無言で手の甲をピシャリと叩かれたり、
ある日には
「ほ~んとアキヨちゃんは
帯がきれいに結べるねぇ、
それに引きかえトモちゃん(私)は。
ハァァァア←ため息」
え? 今『それに引きかえ』って言った!
『トモちゃんは』(すごく低い声で)
と言いながら、目の前で私を睨んでいる!
驚きでした。
また別の日は珍しくにこやかに呼ばれ、
嬉しくなった私は御用ですか?
と足早に近づくと表情を豹変させ
「…おまえじゃない」
とまたピシャリ。
おま…え…
しかも軽く両手で私を押しのけてる!
絵に描いた様ないびり。
針でチクリと刺されてたと思っていたら
それはドスに変わり、
日に何回もバッサリやられ、
もはや虫の息となりました。
これまで各旅館宿で幾度となく
出会ってきたいけずな姐さん。
今となれば
「でましたっ」
どころか
「お待ちしておりました」
と免疫はできても、
仲居一年生にとっては辛い試練でした。
しかし苦い体験だったにも関わらず、
なぜ今に至るまで続けることになったのか。
それはまた別の機会に…。
それにしても辛かったなぁ。
ヤスコ姐さん(仮名)、
覚えてる?
劣等生のトモちゃんだよ!
お姐さんのこと一生忘れねーからなっ★
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